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2014/01/21

もしいま、世界一美しい文書を書く人をあげよ、と言われたら。
僕はカズオ・イシグロを挙げたい。
以前もここで「私を離さないで」を紹介したのだけど、
この作品も紹介しておきたい。

長崎出身の英国人。
ブッカー賞受賞作家にして、
ノーベル文学賞候補の常連。

本作の主人公は英国の貴族にお仕えする「執事」。
時は20世紀の前半、第一次大戦から第二次大戦にかけてのこと。
誇りを持って、自らのすべてを擲って執事の職に全うする男と
それを取り巻く主人、女中頭、そして英国、の物語。

実にうまく構成されている回想型の主旋律にのって、
「です、ます調」の丁寧な筆致の調べが巧みに編みこまれていて
ついつい作品の世界に引きこまれてしまう。

そんなエキサイティングが出来事が起こるわけでもないのに
エンディングに向かってこみあげてくる胸のざわざわ感。
文学好きには絶対おすすめできる、名作です!

正月休みに読んだ一冊。
ボーン・コレクターで有名なジェフリー・ディーヴァ―のミステリー。
故児玉清さんもおすすめの作家。

どんでん返しに次ぐ、どんでん返し。
他の作品も読みたくなる中毒性のある作家ですね。

2013/07/22

「女にも野心がある。 ただ、 女はそれを夢と呼ぶのです。」
(東京経済大学の広告コピー)

人気女流作家。(女流って死語か?)
飛ぶ鳥を落とす勢いのIT企業を創業した女性起業家。
2人の、まさにそんな生き様を見せてくれる話題の本。

同時に読むと、この2冊の通奏低音にある
そのすがすがしい野心(あるいは夢、あるいは向上心)をこれでもかと浴びせられて
読むと元気が出て、でもそのあと、自分のがんばりの足りなさも
思い知らせれちょっと落ちる、そんな読書体験をするのではないかと思います。

僕自身、お二人の力強い生き方と対比して
いかに自分が馬齢を重ねてしまったか。若干めげました。(笑)

共通点もある一方で2人の分野、考え方においては異なる点も多い。
「野心のすすめ」は、コピーライターを経て直木賞作家となり、ヒット作を連発し
続けてきた林真理子さんの自分史であり、若い世代へのエールを書き綴ったもの。
「女の生き方」にも多くの紙面を割いており、仕事は絶対続けるべきで、でも、結婚はすべき、子供は産むべきという考え。個に向き合って思考を深めて作家ならではの視座。

「不格好経営」はDeNAの創業者、マッキンゼー出身、南場智子さんの起業から現在までのいわば創業奮闘記。仕事をしていく上で、男性女性を意識したことは全くないと言い、企業、組織をどう成長していくかという視点が書かれている。

2人とも、この著書で、自らの失敗、恥ずかしい経験をたくさん披露している。
その悪戦苦闘ぶりにわくわくするし、共感してしまうのだが、
「私こんな失敗したのだけど、いろんな人に助けてもらってここまできました。ウフ。」
みたいな一昔前の女性的なカマトト話法でなく、自信満々に堂々と語り、前進している点が
女性成功者の描く自分史として、新鮮な印象を持つ。
これがいまの時代なんだと。

物事を皮肉的に見る人は、
いま林真理子さんが、なぜ「野心」という言葉=槍で、自らを世間を突き刺そうとしているか、
いま南場さんがこの復帰のタイミング、社会的役割としてもビジネス的にも次のDeNAをつくるタイミングで、この本を出すのか(各方面への配慮ある「書き方」も含め)その意味を裏読みするのだろうが、そういった「戦略」なんてことは、僕は些細なことと思う。

その「野心のすがしがしさ」をストレートにレスペクトしたい。

社会の空気が変わり始めた。
さあ「すがすがしい野心」の時代だ。

2013/04/04

新著発売に連動して、アドタイでの連載が始まりました!

もしよかったら覗いてみてください。

http://www.advertimes.com/20130403/article106559/

ちなみにこの記事ページのFB「いいね!」ボタンを押すと、
この記事がより多くの人に見てもらえる機会が増えるらしいなので、押してもらえるとうれしいです。

アマゾンでは「ビジネス企画」ジャンルで1位、「宣伝広告」ジャンルで3位です。
ありがとうございます!

2013/04/02

本日より、書店で販売開始されました!
拙著「ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる」(宣伝会議)
博報堂ケトルの木村さんとの共著です。

新宿紀伊國屋本店さんではマーケティング本のコーナーに
平積みで置いてありました。
ありがとうございます。

紀伊國屋

箭内さんの本、高崎さんの本。岡さんの本に囲まれて、
恐縮している拙著。
でも、蛍光ブルーが光ってますね。
本のデザインは藤田誠さんにして頂きました。

よかったら、立ち読みでも手に取ってみてください。

2013/03/29

本の発売を記念して、下北沢のB&Bで
共著者の木村健太郎さんと一緒にトークショーをやります。
4月4日、20時からです。

http://bookandbeer.com/blog/event/2013404_bt/

事例やクイズも交えて、楽しいイベントにしようと思ってますので、
お時間あれば、ぜひどうぞ!

2013/03/28

磯部の新著『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』(宣伝会議)
が、4月2日から全国書店で発売されます。

博報堂ケトルの木村健太郎さんとの共著です。

磯部が博報堂でストラテジックプランニング局→制作局と経験し、
独立後もさまざまなプランニングにチャレンジする中で
苦労して発見した「ブレイクスルーを見つけるための思考法」を
ホントに惜しげもなく書きました!

アマゾン予約受付中。
書店売りは4月2日から。

現在、amazonの宣伝・広告ジャンルで1位だそうです。
経営学・キャリア・MBAでは47位です。

このブログでは、この本に書ききれなかった情報含め
紹介しておきますが、取り急ぎの出版告知ということで。

読まれた方は、ぜひ感想お聞かせください!

2013/03/20

 

 

アベノミクスなるものが語られ、もしかしたら、今度こそ景気復活か?の期待感が先行するいま、

改めて読みたい本なので、過去の読書ノートを引っ張りだして記事を書いてみます。

 

本書は、19世紀の終わりに書かれ、

顕示的消費(要は、見せびらかし消費)とか、

代行的閑暇、代行的消費(要は、ダンナが金持ちであることを示すためにダンナに代わって、奥さんとか子供が遊び、贅沢しまくること)

なんて概念を生みだした、消費研究としては超重要な古典的名著。

日本のバブル時代を表現する視点としてもよく引用されますね。

狭義のブランド(海外の宝飾、ファッションブランド)への、見栄、ステータス消費を説明する時にも使われます。

 

バブル崩壊を経て、失われた20年で、この消費論はあまり目にしなくなってきたわけですが、

今後、インフレ期待→株、土地の上昇→富裕層のさらなる富裕化→贅沢消費の表舞台化となると

またこの視点が重要になってくるわけです。

 

高級ブランドはすでに値上げをはじめています。

表向きは円安や原料価格の高騰ですが、これはヴェブレン的消費の復活を先まわりする意図もあるはず。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC1900C_Z10C13A3EA2000/

 

何か所か引用します。

 

P117 人間の勤労が最も原始的に応用された場合と同様に、顕示的浪費、すなわち少なくとも見栄をはる習慣の名残をとどめていることが、細かに調査すればいつでも 浮かび上がってくるのである。根本的な目的と主用な要素とがともに顕示的浪費であるということがいかに明白であったにせよ、財やサービスの効用のなかに有 用な目的がまったく含まれない、と主張するのは危険であろう。したがって、根本的にみて有用な生産物では、直接的にも間接的にも、無駄な要素がその価値に まったく関与していない、という主張も危険の度がほんのわずか低下するだけにすぎない。

P133
顕示的浪費の原理は、生活と商品のなかで正当で尊敬に値するものは何か、をめぐる思考習慣の形成を導く。この際この原理は、本来金銭的な名声の基準とは無 関係な、ある程度大きな経済的な意義をもつ行為規範と、必ず直接・間接に抵触することになる。したがって、尊敬に値する浪費という基準は、直接または間接 的に、義務感、美意識、有用性の観念、信仰上のまたは儀式的な正当性の観念、さらには科学的真理の観念に影響を及ぼすことになる。

P89 価値の高い財の顕示的消費は、有閑紳士が名声を獲得するための手段である。彼の手元に富が蓄積されてくると、彼自身の努力だけでは豊かさを十分に証明でき なくなってくる。こうして友人や競争相手の助力を得て、高価な贈り物や贅を尽くした祝祭や宴会を提供するという手段が活用される。

P92 これらの人々や低い階層に属する他の多くの上層階級の人々には、次に、彼らの妻や子供、使用人、家臣という名の代行的消費を行うかなり広範な集団が付随している。 (中略)
このように段階づけられた代行的閑暇と代行的消費の図式を貫いている法則は、以下のものである。すなわち、代行的な閑暇と消費が主人のためになされている こと、したがってまた、こうして生じる正当な名声が主人に付加されることを明白に示すような仕方で、あるいはそのような仰々しさや記章を身にまとって、こ のような職務が遂行されねばならないということ、これである。主人(マスター)や保護者のためにこのような人々によって実行される消費や閑暇は、主人や保 護者にとっては、おのれの名声を高めようという考えの下に行う投資としての意味をもつ。

 

また、ちょっと面白いなと思ったのが、労働に関する記述です。

 

P53 労働を回避することは、たんなる名誉と賞賛に値する行為であるだけでなく、まもなく礼節を保つために不可欠なものになってくる。名声の根拠としての財産の 強調は、富の蓄積の初期段階ではきわめて生々しくかつ不可欠である。労働を回避することは慣例的な富の証拠であるり、したがって社会的地位の慣例的な刻印 でもある。こうして、富が賞賛に値するものだというこのような強調が、閑暇に対するさらに活発な強調を導くことになる。

P56 「閑暇(レジャー)」という用語は、怠惰や静止状態を意味するわけではない。その意味するところは、時間の非生産的消費である。時間が非生産的に消費さ れるのは、(1)生産的な仕事はするに値しないという意識からであり、(2)また、何もしない生活を可能にする金銭的能力の証拠としてである。

 

なんか難しい書き方してありますけど、この本では、要は「労働は卑しい者がやることだ」「働いて、何かを生み出す、生産するということはいっぱしの人間のやることではない」

というようなことを言ってます。

これって、なんかちょっと前のニートの有名発言「働いたら、負け」にも似ています。
また、生産性や効率を追い求める昨今のビジネスエリートの考え方の真逆。

低所得層が、「働いたら負け」が、高所得層が生産性を追求の現代。
1世紀前と労働に関する考え方が180度ひっくりかえっていることの意味は興味深い!
また別のタイミングで深堀りしたいです。

 

このバブルから失われた20年で、日本の消費と向き合ってきた人間が思い知らされたことは

いかにマクロ経済が、人間の消費意識、行動を強く規定してしまうかということ。

ホントに来るのかインフレ・エコノミー???

 

とにかく、消費に日々向き合う者にとって

デフレとインフレでは、消費を見つける文脈、テクストが違うはず。

そのギアチェンジを間違うと大やけどしてしまう。

 

その意味で、インフレへの「備えとして」

ぜひ読み返したい一冊です。

 

 

2012/02/19

1週間、インフルエンザで40度の灼熱荒野を彷徨い、先ほど帰還。
リハビリがてらブログでも書こうと思い、以前読んだ本の感想と書き抜きを。

”文学こそが、革命の本体”
”読むこと、読み変えること、書くこと、書き変えること-これこそが世界を変革する力の根源である”

本書の主張は、この文に集約されている。
古今東西の革命を題材にし、その過程において、「テクスト」がいかに根源的な役割を果たすかを
彩り鮮やか、縦横無尽に語り尽くした文章の、その力強さ、華麗さにちょっとしたトランスを覚えました。
「読む」という行為がいかに本来命がけのものであるか、強烈に思い知らされた衝撃。
浅学な僕には、誰を仮想敵にあれだけファイティングスタイルをとっているのか、若干理解し切れていませんが。
読書人の間で話題のこの本が、僕のひとつ下の若き日本人哲学者によって書かれていることに驚愕。ののち納得。

以下、その他気になった部分をとりあえず書き抜き

”トゥルーズは、哲学とは概念(concept)の創造であると言いました。では概念とは何でしょう。それはそもそも「孕まれたもの(conceptus)」という意味です。「概念にする、概念化する(coception)」という言葉も「妊娠(conceptio)という語に由来します。「マリアの受胎」はconceptio Mariaeと言います。だから、キリストはマリアの概念化(conceptio)によって生み出された概念なのです。”

”ニーチェを引用しましょうか。曰く「自分や自分の作品を退屈だと感じさせる勇気のないものは、藝術家であれ学者であれ、ともかく一流の人物ではない」。さあ、もうここまでわれわれは来たのですから、この一言は素直に飲み込めますよね。わかってしまったら狂ってしまうくらいのものでないと、一流とは呼べない。防衛機能を起動させ、ゆえに奇妙な退屈さや難解さを「嫌な感じ」を感じさせないものは本とは呼べない。”

昨今の、若い書き手による、一見考えている”風”のぺらぺら若者論/社会論の増殖にお嘆きの貴兄に。
読んでいただきたい、若き日本人哲学者の刺激的テクストです。

2011/05/08

GW中、海辺で読んだ一冊。
前から読み出していたが、日常に忙殺されて読み進められてなかったので
今回、一気に読了。

カズオ・イシグロは日本でもっともっと知られるべき作家だと思う。
ブッカー賞作家で、ノーベル文学賞を村上春樹と争っているとも言われる
世界的作家。長崎出身で英国に住み、英語で書いている。

「わたしを離さないで」は
へールシャムと呼ばれる施設に暮らすキャシーという女の子の視点から
その施設、そして彼女たちの存在そのものへの残酷な真実がだんだん
明かされていく、という不思議な世界感、読後感のある作品。
最近、(まだやっているかな)映画になっている。

とにかく描写が深く、構成も精緻。圧倒的な世界感構築がされていて、
むしろ、そんな客観的な評価の余地を読者に与えないほどの没入感がある。
文学の味わいとは、こういうものだと思う。名作。

下世話な言い方になりますが、
いますでに、カズオ・イシグロを読んでいる女性っていうのは
いいものがわかる、知性と感性を持ち合わせた、いいオンナなんじゃないかな。(笑)

やっと読めて、よかった。
強くおすすめします。